野球肘は、
小中学生の野球選手に最も多い
成長期特有のスポーツ障害です!
今回のブログでは、
野球肘の対処法と
予防トレーニングを紹介します。
<目次>
【野球肘について】
①成長期の野球肘の種類
②野球肘の病態とメカニズム
③野球肘が起こりやすい年齢と性別
④野球肘が起こりやすいスポーツ種目
【野球肘の予防法】
①野球肘の危険因子のチェックリスト
②野球肘の予防ストレッチ
③野球肘の予防トレーニング
【野球肘の対処法】
①野球肘のの痛みが出た時に最初にすること
②野球肘の安静期間とスポーツ復帰の時期
③野球肘のリハビリテーション
野球肘について
「野球肘」とは、
投球動作を繰り返すことによって
肘に異常をきたす怪我(故障)の総称です。
大人になってから起こる場合と
成長期の時期に起こる場合では、
損傷される部位が微妙に違っていて、
損傷される部位によって、
医学的な疾患名も異なります。
小中学生の成長期に起こる「野球肘」は、
成長過程の未熟な骨に異常をきたすため、
肘が伸びない&曲がらないなどの運動障害
だけでなく、関節の変形なども引き起こす
とっても危険な障害です!!
(※成長期の骨の仕組みについては、こちらのページ
で解説しているのでご参照ください。)
①成長期の野球肘の種類
成長期に起こりうる野球肘の種類は、
大きく分けて3つあります。
肘の内側が痛くなる内側型と
肘の外側が痛くなる外側型と
肘の後方が痛くなる後方型です。
⓶野球肘の病態とメカニズム
ボールを投げる動作の時、
テイクバックからボールを放す直前まで
肘は曲がった状態で、少し外側に捻るので、
肘の内側には伸張されるストレスがかかり、
外側には圧縮されるストレスがかかります。
また、ボールを放す瞬間に肘が伸ばされて、
この時に肘の後方にストレスがかかります。
成長段階で未熟な骨に
過度のストレスがかかることによって、
内側は引っ張られて剥離骨折
外側は圧迫による骨壊死
後方も引っ張られて剥離骨折
などが起こり、痛みが生じます。
これらは骨の成長軟骨の障害で、
骨の成長に影響を与えるため、
肘の曲げ伸ばしが制限されて
関節が変形してしまうこともあるんです。
中でも特に気を付けたいのが、
外側型の野球肘です☝
内側型や後方型の場合は、
一定期間の安静によって
組織が修復されれば完治しますが、
外側に生じる骨壊死や遊離体は、
手遅れになると手術をしても治りません。
初期の頃は、痛みを感じにくいため、
野球肘検診などで指摘された場合には、
必ず専門の医師に診断してもらいましょう!!
③起こりやすい年齢と性別
小学5年生~中学3年生の
男の子に起こりやすいと言われています。
成長が止まり、骨端線が閉鎖される
高校生以降に
肘の内側にストレスがかかると、
内側側副靭帯損傷となり、
成長期に起こる野球肘とは
また少し違う怪我になりますね。
④起こりやすいスポーツ種目
「野球肘」と言うくらいなので、
“野球”で投球を繰り返すことによって
起こりやすい障害です。
しかし、テニスやバドミントンなど
上から腕を振り下ろすような動作を含む
スポーツでも発症することがあります。
野球肘の予防法①
危険因子のチェックリスト
(1)肩関節の可動性
危険因子の要素としては、
重要度は低めですが、
肘の痛みを予防するために、
最低限の肩関節の可動域は必要です!
チェック方法1⃣
両手を後ろで組めるか?
片方しか組めない場合 -1点
両方とも組めない場合 -2点
チェック方法2⃣
顏の前で手を合わせて
肘を額の高さまで挙げられるか?
額の高さまで挙がらない場合 -1点
鼻の高さまで挙がらない場合 -2点
特に、ボールを投げる方の肩の動きが
制限されている場合は、要注意です⚠⚠
(2)背骨の可動性
背骨の可動性は、
危険因子としてかなり重要です??
チェック方法1⃣
前屈動作で、指先が地面に着くか?
その時、腰は反っていないか?
指先が着かない場合 -1点
指先が着かず、
腰が反っている場合 -2点
チェック方法2⃣
写真のように両足を合わせて、
額が足に届くか?
10㎝以内が理想です。
5㎝以上10㎝未満 -1点
10㎝以上 -2点
チェック方法3⃣
写真のように体を回旋させた時に、
膝が地面に着くか?
13㎝以内が理想です。
7cm以上13㎝未満 -1点
13㎝以上 -2点
チェックをする時には、出来るだけ
誤魔化し動作が入らないように
気を付けて行ってください☝
(3)足を揃えたまましゃがめるか?
股関節が上手く使えているかどうか
のチェックです!
地面とお尻の距離が
野球ボール2個分 -2点
野球ボール3個分 -3点
野球ボール4個分以上 -4点
足を揃えたまま
しゃがめないお子さんは、
腹筋や前ももなど、
体の前面の筋肉に力が入り過ぎていて
体幹を固めてしまう傾向があるため、
肘に負担がかかりやすくなります。
(4)かえるバランス
腕で力んで頑張ることなく
20秒以上行えるのが理想です?
10秒以上20秒未満 -1点
5秒以上10秒未満 -2点
5秒未満 -3点
体幹に余分な筋力がついて
固まってしまっていると
なかなか上手に
バランスを取ることが出来ません
体のバランスの悪さは、
肘に負担をかける投球動作に繋がります。
いかがでしたか!?
お子さんはいくつの危険因子が
当てはまっていたでしょう??
-10点以下だった場合は、
特に要注意です⚠⚠⚠
野球肘の予防法②
予防するためのストレッチ
(3種類)
(1)背骨のスパイラルストレッチ
野球肘を引き起こしやすい
最も大きいな原因は、
肩や肘の柔軟性低下ではなく、
肩や肘の筋力低下でもなく、
背骨の可動性が低下しているために
投げるときに全身を使うことが出来ず、
いわゆる“手投げ”
になってしまっていることです。
そのため、背骨の可動性と
体幹部分の柔軟性は、
野球肘を予防するために
とっても重要です!!
スパイラルストレッチの方法は、
こちらの動画で紹介しているので、
ご確認ください👇
(2)肩甲骨まわりのストレッチ
背骨の次に重要なのが、
肩甲骨の柔軟性です!
肩甲骨の動きが固いと、
下半身から体幹で生み出した力を
上手くボールに伝えることが
難しくなってしまいます💦
そのため、肩甲骨が固い場合にも
結果的には“手投げ”となってしまい
肘に負担がかかってしまいます。
危険因子のチェックリスト
の1つに紹介したこの動き。
実は、肩甲骨の可動性が
大きく影響しています。
実際にやってみると、肩甲骨の内側
あたりに伸びる感じがありますよね!?
写真のように肘を合わせて、
上下に動かすことでストレッチになります。
手のひらを合わせて
上下に5~10回動かせたら、
手の甲同士を合わせて
上下に5~10回動かしましょう!!
肘がオデコの高さまで挙がるように
なるのが理想です!
(3)肩のTレフストレッチ
一応「ストレッチ」という
名前が付いていますが、
肩関節のインナーマッスルを
使いやすくするための体操です。
インナーマッスルについては、
過去に書いたこちらの記事をご参照ください。
肩の関節を支えている
インナーマッスルが働いていないと、
肩関節の状態が不安定となり、
肘にも上手く力が伝わらないので、
肘のまわりの筋肉にも余分な力が入り、
肘に負担がかかってしまいます
肩のTレフストレッチを行うと、
明らかに楽に腕を回せるようになるので、
ぜひ準備運動に取り入れて、
普段から行うようにしてみてください。
⇧やり方はこちらの動画でご確認ください。
野球肘を予防するために、
他にもおススメしたい
様々なストレッチの方法がありますが、
最も重要な3種類のストレッチを
紹介しました。
一番成果がありそうなものから
1つずつでもいいので、
まずは行ってみてください✋
野球肘の予防法③
予防するためのトレーニング
(3種類)
ここまでお話してきた通り、
野球肘を発症する原因は、
背骨や肩の可動性低下に加えて、
全身を上手く使えていないことです。
今回紹介する3つのトレーニングは、
全身をバランス良く使うためのものです。
難易度は少し高めになりますが、
少しずつ練習してみてください。
(1)フロッグ(かえるバランス)
野球肘の危険因子のチェックリスト
で紹介した“かえるバランス”
写真のようなポジションで、
最低20秒以上キープ出来るのが理想です!
このポジションで
長くバランスを維持するためには、
- 脇を閉めて、肩に余分な力が入っていないこと
- 背骨の柔軟性が確保されていること
- 股関節(大腰筋)を上手く使えていること
が、重要なポイントとなります💡
上手く行えない場合は、
野球肘の予防ストレッチ
で紹介した体操を行ってから
練習を開始してみてください😊
(2)インナースクワット
インナースクワットのやり方は、
- 足を肩幅より少し広めに開いて立ちます。
- 前ももの力を抜いて、ゆっくりしゃがみます。
この時、腰は反らずに、頭とお尻が垂直線上にあるのが理想です☝ - お尻の筋肉に力を入れてスーッと立ち上がります。
腰や前ももの力を抜いて
一連の流れをスムーズに行えるのが理想です
上手に出来るようになったら、
両手を挙げた状態でも出来るように
練習してみてください!!
(3)立甲
野球だけでなく、肩を使うスポーツを
やっているお子さんには、
必ず習得して欲しいトレーニングが、
この立甲です❕❕
人(動物)の体の特性として、
本来出来るはずの動きなんですが、
肩関節まわりの機能が低下して、
出来ないお子さんが多いです。
立甲のやり方はこちらの動画で
詳しく解説しています👇
まずは、
見様見真似で挑戦してみてくださいね😉
ポイントは、肩の余分な力を抜いて
脇をしっかりと閉めて行うことです☝
立甲が出来るようになると、
かえるバランスもやりやすくなりますよ⤴
今回紹介した3種類のトレーニングは、
野球肘を予防するためのものです。
すでに野球肘を発症しているお子さんが行うと
肘に負担をかけてしまう可能性があるので、
すでに肘に痛みや違和感を
感じているお子さんは、
次にご紹介する
野球肘の対処法を参考にしてください。
野球肘の対処法①
痛みが出た時に最初にすること
(1)アイシングと安静
肘に痛みを感じた時には、
まずアイシングをしましょう!!
投球は中止して、
肘を安静にすることが必要です💡
(2)専門医師の診察を受けること
野球肘の初期段階の頃は、
あまり痛みを感じないことが多いです。
つまり、
肘に痛みを感じた時には、すでに
症状が進行している可能性があります。
アイシングをして、投球を中止して、
2~3日経っても痛みが引かなければ、
早めに病院や整形外科で
専門医師による診察をおススメします☝
野球肘に詳しい
お医者さんに診てもらえば、
MRI検査もしくは超音波での精密検査で、
しっかりとした診断をしてもらえます。
あとは、お医者さんの指示に従って
肘に負担をかけないようにしていきましょう。
野球肘の対処法②
安静期間とスポーツ復帰の目安
それでは、
『野球肘』と診断されてしまった場合、
どのくらいの期間の安静が必要で、
いつ頃スポーツ復帰できるのでしょうか?
(1)内側型の野球肘の場合
約2~3か月の安静期間が必要です。
内側型の場合は、
牽引ストレスによって肘の軟骨が引っ張られ、
重度の場合には、剥離骨折が生じています。
安静にしてストレスをかけないことで、
剥離していた部分の骨癒合が促進されれば
痛みは軽減していきます。
(2)外側型の野球肘の場合
外側型の野球肘は、厄介です。
約3か月~1年以上の安静
が必要になる場合があります。
圧縮ストレスによって、骨が壊死したり、
関節の遊離体が生じてしまうと、
長期間の安静、
もしくは手術が必要になります。
初期の頃に痛みを感じないことが多く、
発見されたときにはすでに手遅れ😨
というケースも多いため、
野球肘検診などで指摘された場合には、
しっかりと医師の指示に従って
安静期間を設けるようにしましょう!!
(3)スポーツ復帰の目安
内側型も外側型も、
スポーツ復帰できるかどうかは、
骨の状況によります。
MRIや超音波の検査で
骨の状態が修復されていれば、
お医者さんからは
スポーツ復帰の許可が出ます。
ですが、
投げ方が修正されていなければ、
また痛める可能性は高いです!!
野球肘の対処法③
復帰前のリハビリテーション
お医者さんから『野球肘』と診断され
投球中止の指示があった場合、
当然と言えば当然ですが、
万全な状態での復帰に向けて
リハビリテーションをしっかりと行う
ことをオススメします!!
まず第一に改善しておきたいのは、
肘関節の可動域制限をなくすこと❕❕
野球肘の症状が進んでくると、
肘関節まわりの筋肉や軟部組織が硬くなり
肘が十分に曲がらなかったり
真っすぐ伸びなかったりします。
そんな関節可動域の制限は、
早期に改善しておくのが得策です。
ですが、
それよりももっと重要なのは、
肘関節に負担がかかる原因となった
肘以外の身体の使い方を改善すること
具体的には
- 肩や肩甲骨まわりの柔軟性
- 股関節まわりの柔軟性
- 体幹部分の上手な使い方
がとても重要なポイントです💡
1. 肩や肩甲骨まわりの柔軟性
肘関節から一番近い場所にある
肩関節とそれを構成する肩甲骨
ここの動きが制限されていると
肘には余分な負担がかかります。
肩のインナーマッスルが
上手に使えていないと
アウターマッスルが優位となり、
肩や肩甲骨の動きが制限されるため、
柔軟性と同じくらい
インナーマッスルの機能も重要です。
一番わかりやすいのは、
何度も紹介している『立甲』
インナーマッスルがしっかり機能して
肩甲骨の柔軟性が確保されている状態です☝
立甲がしっかり出来ていると
ゼロポジションをとりやすくなり
投球動作時の
肩や肘への負担が軽減します。
四つ這いで肘に体重のかかる姿勢が
負担となってしまう場合には、
壁に手をつくようにして、
体重のかからない状態で練習しましょう!
2. 股関節まわりの柔軟性
どうしても見逃されがちなのは、
肘から遠くにある股関節の柔軟性です。
股関節の柔軟性が低下していると
下半身の力を上半身に伝えられず、
いわゆる“手投げ”の状態
になってしまいます
腕の力だけを使って
思いっきり投げようとしたら、
やはり肘にはかなりの負担が
かかってしまいますよね!?
もちろん、肩関節の時と同様、
股関節の使い方も重要です。
股関節のインナーマッスルとして
働く大腰筋とハムストリングスが
バランス良く機能していることで
股関節の柔軟性も向上します⤴⤴
そのため、股関節の柔軟性を確保し
インナーマッスルを機能させることが
2つめの重要なポイントです💡
オススメのストレッチは
『コモドストレッチ』
『インナースクワット』
3. 体幹部分の上手な使い方
ボールを投げる動作をする時には、
体重移動と股関節~体幹の回旋
により生じた力(パワー)を使うことで
より速く、より強いボールを
投げることが出来ますよね❕❓
肩&肩甲骨まわりと股関節まわりの
柔軟性と機能が確保されても
それらを体幹部分を通して
上手く連動させることが出来なければ
この下半身からの力(パワー)を
ボールにまで伝えることが出来ません?
その結果、腕だけで頑張ることとなり
肘に負担がかかります。
3つめのポイントは、
体の回旋機能を働かせ、下半身と上半身を
連動して使えるようになることです!!
オススメのトレーニングは
『スパイラルスイング』
この記事の前半で、復帰の目安は
“骨の状態による”と書きましたが、
それはあくまで医学的な基準であり、
再発を予防するためには
肘に負担のかかる投球フォームを
きちんと修正してからにしましょう✨
今回紹介したトレーニングを
正しく習得することが出来れば、
投球フォームも
きっと楽に改善できますよ⤴⤴
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